「それには及びません、美緒様…」

傍らで、甲斐が言った。

「俺は典医(てんい。将軍家や大名に仕える医師の事)の資格も持っております…風邪ならば俺が診ます」

「そ、そうなの?」

「その為に俺は美緒様の護衛に選ばれたのですから」

その言葉に、ホッと胸を撫で下ろす美緒。

「医師としての腕は確かです。どうかご安心を、美緒様」

甲斐は、天神に来た時に持ち込んだ荷物を探り始めた。