鯱や破風の飾り板を金の延板で飾られた将軍の居城の天守、そして本丸御殿。

本丸御殿は表・中奥・大奥が南から北にこの順で存在している。

表は将軍謁見や諸役人の執務場、中奥は将軍の生活空間である。

大奥は将軍の夫人や女中が生活する空間である。

大奥は表や中奥とは銅塀で遮られており、1本の廊下でのみ行き来ができた。

その、表。

「それにしても、天神に比べると時代遅ればっかだけどなぁ」

脇息(日本で近世まで使われた、脇に置いて凭れ掛かる為の安楽用具)に寄り掛かり、白い空手着姿の男が呟く。

勅使河原 龍斗(てしがわら りゅうと)公。

現在のヒノモト勅使川原将軍であり、ミルトゥワ名はリュート・グリフィノー。

ヒノモトの政治には直接かかわる事はないが、時に惑星ヒノモトの象徴として、時に交流ある惑星への侵略行為などの調停役として、存在感をあらわしてきた名君である。

ヒノモトの将軍、そして生まれはミルトゥワの名門グリフィノーでありながら、性格は一般民衆に限りなく近しく、それ故に親しみを込め、ヒノモト民衆は彼を『グリフィん坊将軍』と呼んだ。