「…リュークはさ」

ポツリと、椿が言う。

「勅使河原将軍家の息子だったんだよね、自分が知らなかっただけで」

「ああ…そうらしい」

「プレッシャーじゃないの?その肩書きとか、将軍家の息子だから強くいなきゃいけない事とか」

「重荷だ」

即答で、リュークは頷いた。

「番犬として育てられていたからな…突然犬から高貴な位に格上げだ。どう振る舞っていいのか分からんし、美緒さ…美緒にもどう接していいのか分からん。毎日四苦八苦だ。加えて老師には負ける事しかない。ここしばらく、勝ちに恵まれない。勅使河原将軍家の息子になって、俺は弱くなったと自覚している所だ」

「……」

リュークも、椿と同じだ。

同じ重圧の中で生きている。

「だが」

リュークは続けた。

「焦らなくていいと思う。勅使河原の息子を名乗ったら、急に強くなる訳ではない。俺とて昨日今日突然知らされた事実だ。それでいきなり相応しい強さを身に付けろと言われても無理な話。最終的に相応しい力を得られたなら、それでいいと思っている」