天神学園のお忍びな面々

「そうだとも」

傷の痛みに顔すら顰めず、リュークは振り向いた。

「美緒様を守る事こそ、番犬たる俺の本懐だと思っていた。が…まさか守るつもりが、守られていたとは…」

「だったらっ!」

菩薩を地に突き刺し、エレナはリュークの赤道着の胸倉を摑んだ。

「今度は勇ましき勅使河原将軍家の男として、か弱き娘を守ればよいではないのっ!いちいち立ち位置を気にするなどと、何と男らしくないっ!」

「……言うは容易い…」

エレナの手を力なく振り解き、リュークは歩き出す。

…リューク。

まだその名すら、彼には馴染んでいない。

名も、生まれも、真実も。

リュークにはまだ、何ひとつ馴染んではいなかった。