天神学園のお忍びな面々

無理もない。

将軍家の番犬として、捧げる筈の人生だった。

美緒を護る為に、命すら費やすつもりだった。

それがまさか、寧ろ守られているのは自分だったとは…。

今まで姫だと思っていた人間に、突然上から目線で物が言える筈もなく。

「申し訳ありません…美緒様…」

リュークは頭を下げた。

「しばらく、1人にさせて下さい…」

背を向け、歩いていくリューク。

「おい」

それまで無言に徹していた牡丹が、リュークに声をかけた。

「…勅使河原将軍家とは、勇者の勇ましき血と、女だてらに一国の命運を背負って立とうとした勇ましき血、両方を受け継いでいると聞く。貴様も、無論受け継いでいるのだろう?こんな程度でへたばるような事は、ないのだろう?」

「……」