甲斐という名は、ヒノモト番犬養成所で付けられた。

だから、本名でない事は知っている。

将軍の留学していた地球で、甲斐犬は気性が荒い反面、飼い主以外の人間には心を開かず、唯一人の飼い主に一生忠誠を尽くす事から一代一主の犬とも評される。

それ故に、教官は甲斐という名を付けたのだろう。

同期の仲間だった紀州や土佐達よりも腕を上げ、甲斐はめきめきと頭角を現していった。

このまま、勅使河原将軍家の人々に忠誠を尽くす番犬として、生涯を捧げると思っていた。

美緒の護衛の為に天神に派遣される時は、遂にその時が来たと胸を高鳴らせたりもした。

しかし…。