天神学園のお忍びな面々

白雪は困っていた。

昨日の放課後、エレナに無理矢理連れられて行った天神モールで買わされたチョコ。

父の小岩井 冬樹(こいわい ふゆき)や、従者の八代目豆太郎(まめたろう)、通称『エイト』に買おうと思っていたのだが、それは本命ではないでしょうっ!と、エレナにもう1個買わされてしまった。

つまり、手元にもう1個余っている。

どうしよう。

自分で食べようか。

しばらく考えながらボーッと立っていたが、白雪はボーッと立ってるのがテンプレなので、誰も気に留めない。

そこへ。

「おい」

ポンと頭に置かれる手。

見上げると、先輩が立っていた。

「いつにも増してボンヤリしているな。気を付けろ。学園内とはいえ、廊下を走る者もいる。ぶつかるぞ」

「………………………………」

白雪は、手元のチョコと先輩を見比べた。

「……………………あげる」

「ん?」

「………………………………監視のお礼」

「監視しているのはお前だろう」

「………………………………監視させてくれて有り難う」

「許可した覚えはないがな」

「………………………………監視されてくれて有り難う」

「さっきと何が違う?」

「………………………………有り難う」

「もうめんどくさくなったんだな、分かるぞ」