この日、積もった雪を手に結晶を見た。

緋衣呂君がたくさん見せてくれた。



「 詩乃、好きだよ。ずっと、詩乃だけを思ってた 」

「 私も好き、大好きだよ 」



私が好きな緋衣呂君と本当に結ばれるキスをした。



そして私が風磨君と帰る時が来てしまい…

帰りたくないのに帰らなくてはいけない。



緋衣呂君と暁月君……

二人が並んで私を見送ってくれる。

二人の私にだけ見せる笑顔。


でも……


この光景が最後だった。

神様がくれた時間はただ、時を止めただけだった。


双子が愛する者にお別れを伝えるための時間。

双子に愛された私のための時間。

緋衣呂君の願いは叶った……

池沢家に代々産まれる双子、それは短命という宿命を生まれ持つ。


それを、緋衣呂君は断ち切りたかった。


出来れば、私に残して欲しいとも思った。

緋衣呂君の愛の種を……



「 緋衣呂君… 暁月君…… 二人が一緒で羨ましいよ、妬けちゃう 」



ずるいよ、私だけが一人になっちゃった。


そんな私の側にいる風磨君。

誰よりも泣き、叫び、届かない思いを溜め込み悲しみにくれた私のそばにいてくれた風磨君。

今ならわかる……


“ 俺には役目があるから ”


それは、私を一人にしない事。

緋衣呂君との約束。

池沢家に使える石嶺家では残された者を支え守る役目がある。

風磨君は初めからわかっていた、だから、私のそばにいる。


それは、緋衣呂君が風磨君に私を託したから。


大人になり、緋衣呂君と暁月君への思いを胸に抱いたまま私は風磨君のお嫁さんになった。


あの時の、二人の笑顔はずっと私の中にある。

時が流れても、私は……


緋衣呂君との恋を忘れない。


今でも、好きだから……








_完_