予定日を過ぎて、生理が来なかったからかなり期待した。来たかと思った。膨らむ妄想に心臓が躍った。

「・・・こういうのは授かりもの・・・だもんねぇ」

 トイレで深い溜息吐いて、心底がっくりと肩を落とすあたし。千也をがっかりさせちゃうかなぁ・・・、なんて言おうか・・・・・・。

 どうしても手に入れたかった抽選に漏れたみたいな。八つ当り先が見当たらない失望感に、あたしは幾度も深く溜め息を漏らす。

 


 千也が布団の中に潜り込んできた時。その前に、お風呂入ってる水音とかで目は醒めてた。眠りも浅かったんだと思う。考えながら寝付いたし。
 横になった身体にあたしがぎゅっと抱き付いたのを、やんわり抱き締め返してくれる。洗い上がりのいい香り・・・気持ちのいい体温。愛しい男の。

「・・・おかえり千也」

「ん。・・・おやすみ」

 いつものように頭を撫でられて。・・・言ってしまおう。

「・・・・・・あのね」

「ん?」

「・・・・・・・・・ごめんね」

 あたしはそこまで言って・・・その先が言えなくなってた。

 千也は何のコトかを巡らせたのか、少し間があってから「・・・子供?」と優しく返された。無言で頷く。するとあたしの躰ごと全部を閉じ込めるように、強く抱き竦められた。

「なんで謝るの。カナは何も悪くない」

「・・・・・・でも・・・」

 千也の胸元に顔を埋めて涙ぐむ。何だかすごく申し訳なさでいっぱいだった。あたしの躰がちゃんと受け止めてあげられなかったんだって気がして。 

「・・・・・・ごめん」

 もう一度、弱弱しく謝って。涙声になったから泣いてるのも隠せなくなった。

「カナ」

 千也は体を離すと顔を寄せて、おでこと鼻をあたしのにもくっ付ける。

「これから毎晩リベンジすればいいんだから。・・・そっちを覚悟してな、分かった?」