この手だけは、ぜったい離さない




荒井くんには目を逸らされてしまったけど…。

洋くんは「あかり、今日も遅刻しなかった俺を褒めてくれっ。すげぇだろ?」なんて得意げにピースなんかして、笑いかけてくれた。



するとすかさず荒井くんが「なにが褒めてくれ、だよやっぱ頭おかしい」なんて悪態をつくもんだから。



「テメェ言わせておけば好き放題言いやがって、コノヤロー」

「あぁ?なんだよやんのかよ?」



ってな感じで……またいつものような口ゲンカがはじまってしまった。



まぁ、ケンカするほど仲がいいっていうことわざがあるけど。

まさにそれって、荒井くんと洋くんのことだよねぇ…。



胸ぐらを掴みあったりはするけど、実際に殴ったりはしないから。

それって結局は、仲がいいってことだもんね?



「あれ、またケンカしてるのこのふたり?ほんっと仲良しだねぇ。あっ、それよりも宇月さん。早く更衣室に行こうよ」

「あっ、うん待って追野くん。洋くんたちも早く着替えなきゃ間にあわないよ」



廊下で掴みあいをはじめた荒井くんと洋くんが心配だけど、授業に遅れるわけにはいかないから。

先に歩きはじめた追野くんのあとを追いかけた。