この手だけは、ぜったい離さない




「いい、家まで送るから」

「えっ?送るっていっても……わざわざ家を通り越してまで送ってくれなくても…」

「通り越してって言っても、10分くらいしか変わらねぇじゃん」



でもやっぱり申し訳ないからいいよ、って言っても……この様子だと聞いてくれそうにもないなぁ。

それにまだ15時30分だし、暗いわけでもないからぜんぜんひとりで帰れるんだけどな。



そう思ったけど「送る」って言ってくれた洋くんの優しさが嬉しかったから、ここは素直に甘えることにしようかな。



「ありがとう、洋くん。じゃあお願いしようかな」

「まぁ……誘ったからには家が遠くても送るつもりだったから。別に礼なんかいらねぇよっ」



あ……また頬がほんのり赤くなってる。

洋くん、今日は照れてばかりでなんかかわいい…。



「あのー……それよりも、手…掴んだままなんだけど…」



私の左手の手首を、がっしりと握ったままの洋くんの骨ばった手。

別に嫌とかじゃないんだけど、男の子に手なんか掴まれたことがないもんで。

洋くんの手に全神経が集中してしまって、まったく落ち着かないから…。



「あっ、すまんっ‼ついっ……‼忘れてたっ」



はっと驚きながら私の手をすぐさま離した洋くんは、赤くなった顔を隠すようにして窓を向いた。

そんな洋くんを見ていると、なんだか私も顔が熱くなってきた。