とっても仲良しだったその男の子はびっくりするくらい泣き虫で、ちょっとからかわれただけですぐに泣いちゃうし。
蚊みたいな小さな虫にもビビっちゃうし。
いつもおどおどしてるような子だった。
『どうしたの、洋くん?なんで泣いてるの?』
『ひっく……啓太くんに……通園帽子とられたっ…』
『それは許せないね。待ってて、私が取り返してくる!』
……ってな具合でイジワルな啓太くんにグーパンチを喰らわせちゃったりして、私はその男の子を守るヒーローをやっていた。
『6年経ったらまた戻ってこられるんだってお父さんが言ってたの。だからね洋くん。また会おうね!』
『うん……おれ、待ってるね!あかりのこと、ずっと待ってる!』
お父さんが運転する車の後部座席の窓から、顔をだして手を振った。
『あかりのこと、ぜったいに忘れないから!』
泣きながら車を追いかけてきたのは、仙崎洋(せんざきよう)くん。
泣き虫な男の子だったけど、私にとってはいちばんの友達だったからよく覚えてる。