この手だけは、ぜったい離さない




げげっ……。

洋くんと、恐れていた荒井くんがきた…。



ほんの一瞬荒井くんと目があったような気がして、すぐさま背中を向けた。



荒井くんからなにか言われたりするかな…。

『テメェこのやろう、さっきはよくも……』って、後ろから椅子を蹴られたりなんかして…。



「ひーっ‼怖いっ!」

「ん……なにが、どしたのあかり?野菜を切る係がそんなに嫌なの?」

「ごめんみっちゃん、今はそれどころじゃないのっ!」



咄嗟に手元にあった冊子で顔を隠した私。

胸がはちきれんばかりにドキドキなってきて、冷汗がどっと溢れてくる。



「あっ、ちょうどいいタイミングで荒井くんたちが来たね。おーいっ、荒井くん!こっちこっち!」



って、追野くーん⁉

荒井くんを呼んだりなんかしないでよぉっ!



いや……同じグループなんだから仕方がないかっ⁉

でも嫌だ……荒井くんと一緒は嫌だぁぁぁっ!



「あぁ?なんだよ?」



クラスメイトの笑い声にまざり、離れた場所から聞こえてくる荒井くんの声。

顔を隠す冊子を少しだけずらして、おそるおそる荒井くんを見てみると。

荒井くんは私の正面に座る追野くんの、真横に立っていた。