この手だけは、ぜったい離さない




靴を履いたまま階段をかけあがり屋上のそばまで来ると、扉の向こうから聞こえてきたのは遥の怒号だった。



『洋を諦めるって言うまで許さない‼洋の彼女になるのは私なんだから!』



やっぱりケンカしてたのか。

って、洋の彼女になるのは私っていったい何の話しをしてんだよ?



ここまで全力で走り続けた身体をちょっと休めたいところだけど、そうは言ってられない状況みたいだな。

こめかみを伝う汗を拭くこともせず、慌てて屋上の扉を押しあけた。



すると俺の目に飛びこんできたのは、驚いた顔で俺を見ている遥とあかり。

ふたりの目には涙が浮かんでいた。



そうか、そういうことなのか。

ようするに遥は、俺と幼なじみで仲がいいからって理由であかりに嫉妬したんだな?

じゃなきゃ『洋の彼女になるのは私』なんか言わねぇもんな?



俺をそこまで想ってくれている気持ちは、素直に嬉しいんだけどな。



『俺が誰と付き合うとか、それを決めるのは遥じゃないだろ?俺自身だから』



だからってあかりを泣かすなよ。

俺は相手が誰だろうがあかりを傷つけるやつは許さねぇ。



って、本当は怒鳴ってやりたいところだけど。

遥は女の子だし傷つけることはしたくなかったから、これでも俺なりに角のない言葉を選んだつもりだった。