この手だけは、ぜったい離さない




はぁ?

仲良く歩いてただって?

そんなの聞いてねーぞ。



って、あかりが追野と会話したとかいちいち報告してくるわけねぇんだけど…。



あかりと追野が並んで歩いてる姿をちょっと想像しただけなのに、腹の奥底から熱い何かが突きあげてくる。



今ごろふたりでなんの話しをしてるんだ?

楽しそうに笑ってたりすんのか?



すげぇイライラする。



けどもし……それをあかりが楽しんでいるとしたなら?

あかりが、追野のことを好きだとしたなら?



『ほらほらっ、洋!手が止まってるよ?ちゃんと野菜切ってよね?』

『っせぇーな、言われなくてもやるよ』



本当はいますぐにでもあかりと追野のあとを追いかけて『あとは俺がやるから、追野はもういいから』って言ってやりたい。

だけど、あかりが追野のことを好きだとするのなら。

悔しいけど、それは邪魔したくない。

だからこのときは、あかりの気持ちがわからなかったから追いかけなかった。



だけど、これはまだほんの序章。

俺にとって最も最悪な事件は、このあとにあったんだ。



この日の夜、あかりが俺の部屋にきてくれたところまでは良かった。




『やったー、私の勝ち!次は何のアイスを食べようかな〜っ』



とにかくあかりと会う口実をつくりたいがために、咄嗟にオセロをしようなんていった俺は見事に負けた。



オセロなんかほとんどやったことねぇのに『俺に勝ったらアイスを奢ってやる』だとかって言ったのも…。

実は、あかりとまたデートがしたかったからってだけだ。