この手だけは、ぜったい離さない




野外炊事でも、また事件がおこった。



『宇月さん、大丈夫?けっこう血が出てるね。いったん宿舎に戻って手当てしてもらいなさいって先生が言ってたよ。僕も班長として一緒に行くから行こう?』



なにっ……あかりが指を切っただって⁉

んで追野と一緒に宿舎で手当てするだって⁉



『あかり大丈夫かっ……』



めんどくせぇことに野菜を切る係に任命されていた俺は、包丁をまな板の上において慌ててあかりの元へ。

ってところで、遥に『洋は行かなくていいの』と服の裾を掴まれ止められた。



『あかりちゃんにはしっかり者の追野くんがついてるんだから大丈夫だよ』



そうかもしれねぇけど…。

でも指を切ったっつーからやっぱり心配だし、それに追野とあかりがふたりっきりになるとかぜったい嫌だ。



『いや、大丈夫じゃねぇから。あとはお前にぜんぶ任せる』

『洋、ふたりについて行くのはダメだからね!あかりちゃんと追野くんを邪魔しないであげて!』

『なんだよ、あかりと追野の邪魔って?』



遥のいまの口ぶりだと、まるであかりと追野がいい感じみてぇじゃん。



『だってあのふたりって仲いいでしょ?3日くらい前の放課後のことだったかな?あかりちゃんと追野くん、校門のとこまで仲良く歩いてたんだよ〜』