この手だけは、ぜったい離さない




『もういい、お前ら麻雀のルールぜんぜんわかってねぇじゃねぇかっ!』

『だったら洋が教えてよ?ね、もっかいやろ?』

『ぜったいにやらない。垣田にでも教えてもらっとけ』



垣田も『俺が教えるよ』って言ってるし、俺は遥たちが集まる雀卓から離れて、ひとり壁際でスマホを開いた。



おっ……ちょうどあかりからラインだ。



『はるちゃんと麻雀してるんだって〜?いいなぁ、楽しそうだねっ』



……って、なんだそれ?

あかりってもしかして麻雀やんのか?



アイツらがうるさくて麻雀なんかできねーわ、って文章を打ちこんでいると。

枕がいきなり俺の顔面にヒットしたから、手からスマホを滑り落としてしまった。



『あははははっ!ダッサ、洋ってばダッサ!』

『遥テメェ……よくもやりやがったな!』



枕の角をつまんで、からかうように笑う遥に向かってぶん投げてやった。



っていうか、いつの間に麻雀から枕投げになってんだよ。

垣田も桑野も、ノリまで参加してるし…。

神田まで来てるしよ。



あかりに今は枕投げやってるってラインを返して、足元に飛んできた枕を今度はノリに投げつけた。

ノリは俺が投げた枕をキャッチして、遥に投げてるしよ…。



『ぎゃーっ‼ちょっと荒井、思いっきり投げてこないでよ!』

『南海、俺の影に隠れて!』

『カッコつけてんじゃねーよ垣田っ!』



で、ノリと桑野のふたりがかりで垣田に枕を集中的に投げてるしよ。