この手だけは、ぜったい離さない




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『お前マジで授業でんの?1時間目、体育だぞ?いちいち体操着に着替えるの面倒くさくねぇ?』

『まぁ確かに着替えるのは面倒くせぇけど俺は出るからな』



体育とか普段はぜったいにサボるところだけど、この日の俺は珍しくやる気だった。

やる気だなんて言ったけど、体育そのものにやる気になってるわけじゃない。



これはあかりのためだ。



『……都会の友達が恋しくなったのか?』



バスの中でそう聞いたときに、あかりは『うん……まぁ、ちょっとね』って寂しそうに頷いた。



だからといって、俺はあかりと都会の友達を会わせてやることはできねぇ。



だけどあかりのために何かしてやりたい。

だったら、あかりに寂しい思いをさせないようにしよう。

あかりが1人でいるときは俺が話し相手になろう。



そう思ったから、俺は嫌いな授業でもできるだけ参加することに決めたんだ。




『お前、最近ほんっとサボらなくなったよな。マジつまんねぇ』



俺はただ、まだクラスに馴染めないって寂しそうに言ったあかりが心配なだけなのに。

ノリときたら、こうやってまた俺をからかいやがる。



『おい、真面目に頑張ってる人間にむかってつまんねぇって言うな』

『何が真面目だよ、気持ち悪ぃな。タバコもやめるとか言いやがってお前やっぱ頭おかしいわ』



あー……マジで腹立つ。