この手だけは、ぜったい離さない




あかりの口から、恋愛はまったくしてなかったって聞いたときは『あぁ……そっか。はははっ。そっかそっか、そういうことかぁ』安心してしまって、ついつい笑ってしまった。



✱✱✱✱✱✱✱✱



『洋、お前にしてはやけに積極的じゃねーか?一緒にかえらねぇ?とか言って』



あかりからもらったタバコみたいなラムネをブレザーのポケットに入れたまま、俺はタツヤの部屋の座椅子でくつろいでいた。



6畳くらいの和室には、タツヤが口から吐いたタバコの煙が充満している。



『なぁ、あの子誰なんだよ?見たことねぇ子だな』



タバコの灰を缶の中にジュッと落としたカズも、タツヤと一緒になってニヤニヤしながら俺を見てくる。



『幼なじみの子だよ。小学生のころに転校して、んで6年ぶりに帰ってきた子』



いつもならついてすぐタバコに火をつける俺だけど、この日はポケットの中のタバコには手を伸ばさなかった。



『ふーん?で、洋はあの子のことが好きなんだなぁ』

『女子に話しかけようともしない洋が、一緒に帰ろうって言うくらいだもんな?』

『おい、なんだよお前ら。その腹立つニヤケ顔は。ぶん殴ってやろうか』



……あぁ、もう。

こうやってからかわれるのはわかってるから、あかりが好きだってことは隠してぇんだけどなぁ…。



あかりを前にしてしまうと気持ちが隠しきれねー。

こうやって周りにどんどん、俺の好きな人はあかりっていうのが広まっていくのか…。