この手だけは、ぜったい離さない





ぺろちゃんは首輪もリードも赤だから女の子なのかな?

玄関先でその後もぺろちゃんをなでなでしていると、駐車場に白い軽自動車が砂ぼこりを巻きあげながら入ってきた。



「うわぁ……最悪のタイミングで帰ってきやがった…」



ってため息を洩らす洋くんの視線の先には、車から降りるお母さんの姿が映っていた。



お母さんは洋くんとはあんまり似てないけど艷やかな肌だとか、くっきりと線をひく二重の目が綺麗な美人さん。

金髪のセミロングをポニーテールにしているお母さんは、最寄りのスーパーでレジを打っているからもう何度も顔を合わせているんだ。



そのたびに「あかりちゃんみたいな可愛い子が洋の彼女になってくれたらなぁ」って、おもしろおかしく冗談を言ってきたりして。

「今度うちに遊びにきなよ」とたびたび誘ってくれたりするような、明るくて気のいい人だ。



「あらっ、あかりちゃん来てたの?ちょっと洋、あかりちゃんが来るなら一言連絡しなさいよっ」

「いや、急に決まったことだから。ぺろを見たらすぐ帰るつもりだったし」

「えーっ、そうなのあかりちゃん?なんならあがって行きなよ。あ、夕飯食べてく?」

「だから今日はすぐ帰るっつってんだろっ。いいからもう中に入れっ!」