この手だけは、ぜったい離さない




洋くんの家に行くことも6年ぶりだけど、ホタルの里公園の前を通ることも6年ぶり。



「うわぁー懐かしい!6年前のまま、なーんにも変わってないね!」



バスから降りた私は、キャリーバックを引きながらバス停の隣にあるホタル公園に入った。



小さな公園だから遊具はブランコと滑り台、ジャングルジムしかないけど。

当時は私もこのあたりに住んでいたから、このホタル公園では毎日のように遊んでいたんだよね。



「まぁ俺は毎日この公園の前を通るから、懐かしいとかよくわかんねぇけど…」

「あはは、そうだね。洋くんの家は公園の真横だもんね」



公園の緑のフェンスの向こう側に建つ、青い瓦屋根の和風な住宅。

あの家が洋くんの住む家だ。



「ちょっと待っててな。今連れてくるから」



ガラガラっと引き戸を開けて家の中に入って行った洋くんを、私は「わかったよ」と頷いて扉の前で待った。



洋くんの家もあんまり変わってない。

洋くんのお父さんが使うガレージの中は、昔洋くんが乗っていたマウンテンバイクとか、自転車の空気入れとか。

一輪車とか、なんなのかよくわからない工具とかが乱雑に転がってる。



1階の和室の前にある縁側からは、お庭の松の木や楓が見られることだって昔のまま。