この手だけは、ぜったい離さない




オセロの盤面を挟んで向かいあう私と洋くんは、お互いに真剣に盤面とにらめっこ。

洋くんとのはじめてのオセロ対決は、白熱するかと思いきや意外とあっさりしたもので。



洋くんの黒い石を6つだけ残し、私の圧勝という結果に終わってしまった。



「やったー、私の勝ち!次は何のアイスを食べようかな〜っ」

「あーもー……ぜったい勝てねぇわコレ。仕方ねぇからダブルでもトリプルでも奢ってやるよ」

「ふふっ、楽しみだなぁ!」



またアイスをごちそうしてもらえることも嬉しいけど。

洋くんと一緒にお出かけできることの方が嬉しいよぉ。



はしゃぐ私と肩を落とす洋くんとのやりとりをいつから聞いていたのか、荒井くんが麻雀牌を片手にぷっと笑いはじめた。



「洋、お前ってそもそもオセロのルール知ってんのかよ?」

「っせぇな、それくらい知ってるわ!」

「なーにがぜったい負けねー、だよ。ほとんどやったことねぇくせに」

「うるせぇ、それ以上言うな!」



あれ……洋くんってオセロ強いんじゃなかったの?

いや、いざ対局して見ると正直な感想でまったく上手じゃなかったけどさ…。



それなのに俺に勝ったらアイスを奢るだなんて、洋くんってばそれだけ自信まんまんだったんだなぁ。