この手だけは、ぜったい離さない




点呼の時間までは、友達の部屋に行ったりすることは自由なんだけど…。

異性の部屋に行くのは禁止ですって先生も言ってて。



昨夜にはるちゃんや神田さんも洋くんたちの部屋に行ったことがバレて、きつい説教を受けたみたいだから…。

先生たちの目を気にしながら、斜め向かいの部屋の扉をそーっと押しあけた。



「おー、来たかあかりっ。遅えなって思って、いまからラインしようとしてたところなんだよ」



扉からほんの少し顔を覗かせる私に、すぐに気づいてくれた洋くん。



「ごめんごめん……だって先生に見つかっちゃったら怒られるから…」

「そんなもん気にすんなって。あ、ちゃんとオセロ持ってきたか?」



洋くんに「まぁ入れよ」って後ろからぽん、と背中を押され「お邪魔します…」と遠慮がちに足を進める。



うぅ……男の子ばっかりだからなんか緊張するよぉ。



昨夜できなかった麻雀で盛りあがる荒井くんに垣田くんや桑野くん、それから佐伯くんたち。

追野くんは島田くんと角南くんと何やら会話をしていたみたいだけど、私に気づいて手を振ってきた。



「あれ、今日は宇月さんが来てる。どうしたの?仙崎くんとオセロやるの?」



そっか、そういえば追野くんも洋くんと同じ部屋だったんだ。