この手だけは、ぜったい離さない




旅館みたいだなんて言ったけど…。

12畳くらいある和室には、四隅に7人分の寝具があるだけで他にはなーんにもないけどね。

テレビがあればいいなって思った私の考えは甘かったか…。



「みんなで布団を敷いて雑魚寝って感じかぁ。なんか楽しそう」



みっちゃんに「ね、あかり?」って笑いかけられ「オセロ対決しようね」と笑い返した。



早く夜にならないかなぁ。

今からワクワクする。



みっちゃんとオセロや、他の子たちとトランプで遊ぶ姿を脳内で描きつつ。

先生に言われたとおりに荷物を宿泊部屋におき、持参してきたお弁当とレジャーシートを手に持って部屋をでた。



お昼ご飯は、芝生広場で食べるみたい。



「美月ちゃん、あかりちゃん!一緒にお弁当食べない?」



芝生広場のポプラの木の下に、みっちゃんと一緒にレジャーシートを並べていると。

満面の笑みではるちゃんと、同じクラスの神田乃衣(かんだのい)ちゃんがやってきた。



神田さんは、私のすぐ後ろの席の子で、はるちゃんと大の仲良しみたい。

ダークブラウンの長い髪は見るたびに風にさらさらなびいていてきれいで、はるちゃんと笑いあう横顔もすごく可愛い。

入学してから今まで、もう何度そう思ったことかわからないけれど、未だに神田さんとは親しく話せるような仲ではないんだ。