この手だけは、ぜったい離さない




バスの座席は自由だったから、みっちゃんと一緒にちょうど真ん中くらいの場所にある席に座った。

学校から目的地の移動距離は2時間くらいかかるみたいで…。



みっちゃんとふたりして「長いね退屈だね」って話してたら、運転席のすぐ後ろの席に座っていた担任が「じゃあひとりずつ自己紹介でもしよう」って言い始めて…。



自分の名前を言ったあと、好きなことをひとつだけ言うっていう自己紹介。



「えぇ〜……恥ずかしいから嫌だなぁ。ね、みっちゃん」

「うん、ほんっとヤダ。何を言おうかなぁ」



マイクが前の席から順番に回されてくるうちに、みっちゃんの番になって。

「有坂美月です。好きなことは読書です」って手短に終わらせたみっちゃんから、いよいよ私にマイクが回ってきた。



あー、緊張するぅ…。

私、人前で発表したりって苦手なんだよなぁ。



「えっと……宇月あかりです。好きなことは……なんだろう。恋愛ドラマを見ることとか、料理をすることです」



って、なんとか言い終えることができた私はクラスメイトの女の子たちから「すごーい、料理できるんだ」っていう言葉とともに拍手ももらった。



そんな感じで、大盛りあがりのバスの中。



洋くんは、何を言うのかなぁ?

身を乗りだすようにして後部座席を見ると、いちばん後ろの席に座る洋くんに、ちょうどマイクが渡った。