この手だけは、ぜったい離さない




3メートルくらい先を歩くふたりを笑いながら眺めていると、みっちゃんが「仙崎って本当はいいやつなんだね」って声を潜めながら耳打ちしてきた。



「中学生のころの仙崎はひたすらケンカばっかりしてたし、校内でも普通にタバコ吸うし。授業中も教室に入らず、廊下で喋ってたりとかさ。とんでもない荒くれ者だとばかり思ってたけど、なんか最近イメージが変わったよ」

「どう変わったの?」

「優しいところもあるんだなって。まぁ、あかりにだけだけどね。私だってあかりのすぐ隣にいたのに、私のキャリーバックは持ってくれなかったし。っていうか、完全に無視だったし」



みっちゃんは口を尖らせてそう言ってるけど…。

洋くんが手伝ってくれなかったのは、みっちゃんがキャリーバックを軽々と持ち上げてひょいひょい階段登ってたからじゃないのかな…?



だから私だけ特別ってわけじゃないと思うんだけどなぁ…?



みっちゃんとふたりで校門を抜け、先にあるグラウンドには4台の大型バスが停まっていた。

その近くには、クラス別に並んでいる生徒がすでに100人ほど集まっている。



「今日から2泊3日のオリエンテーション合宿がはじまります。この合宿ではクラスの親睦を深めるとともに、相互理解や社会性も身につけてもらえたらと思います」



という校長先生の長い挨拶からはじまり。

今日から2泊3日、ワクワクのオリエンテーション合宿が幕をあけた。