この手だけは、ぜったい離さない




すると先を歩いているとばかり思っていた洋くんが「いくらなんでも登るの遅すぎ」って後ろから笑いながら声をかけてきた。

振り返ると、その隣には荒井くんもいる。



「かせよ」って私の手からキャリーバックをさらった洋くんは、私を追い越してぐんぐん階段を登っていく。



「あっ、ちょっ……洋くん!重たいからいいよ!これくらい自分で持てるから!」



慌てて洋くんのあとを追いかけたけど、洋くんは私のキャリーバックを離さないまま階段を登りきった。



「階段から転がり落ちそうで、危なっかしいから見てらんねぇよ」

「あ……ありがとっ」



うっ……かっ、かっこいい…。



校門の前まできたところでキャリーバックを差しだされて、熱くなった顔を背けながら受けとった。



「なーにが危なっかしいから見てらんねぇよ、だ。カッコつけやがって。俺の方が見てらんねぇわ」

「うるせぇなぁ、お前と違って俺は紳士なんだよ。少しは俺を見習えっての」

「はぁ?洋から見習うところなんて何もねぇよ。だってバカじゃん」

「あぁ?お前にだけはソレ言われたくねぇなぁ。だってバカだろ?」



あはは……。

また恒例の洋くんと荒井くんのケンカがはじまってしまったよ…。