洋くんに告白するって決めたものの…。
それは、もうちょっと先の話しになりそうだな…。
その後もみっちゃんと会話を続けていると、バスが『ホタルの里公園前』の停留所で止まった。
すでにすべての席が埋まってしまっているバスに、黒いボストンバックを肩にかけた洋くんと、似たようなバックを持った荒井くんが乗りこんできた。
洋くんと荒井くんがバスに乗ると、洋くんたちの周りにいる生徒たちから私語が消える。
なんだかみんな、洋くんたちを怖がっているみたい。
また前みたいに、洋くんたちにむりやり席を立たされるって身構えてるのかもしれないなぁ…。
そうなってしまう前に、私の席を譲ってあげよう。
「洋くん、こっちだよ」
小声で洋くんを呼んでみたら、いちばん後ろの席に座っている私に気がついてくれたみたい。
「よぉ」なんて笑顔で、ひらひらと右手を振ってくる。
私はすぐに手を振り返し「私の席に座ってもいいよ」とジェスチャーをしてみせる。
でも洋くんは「いらない」と声を出さずに口だけ動かすと、荒井くんと同じタイミングで吊革を握った。
「おっ、珍しいね。仙崎たちが誰かの席を取らずに立つなんて。こんな光景はじめて見たんだけど」