この手だけは、ぜったい離さない




アイスクリーム屋さんをでたあと、洋くんと歩調を揃えて来た道を帰る。



このあたりは駅の近くというだけあって、一直線にのびた荒いアスファルトを頻繁に車が走っている。

私は洋くんの隣で、ガードレールを挟んで向こうを走る車から目をそらし、茜色の空にたなびく雲を見あげた。



もう帰る時間かぁ…。

洋くんと一緒にいると、あっという間に時間が過ぎていくなぁ…。



「なぁ、あかり」



道路を走るバイクのエンジン音に混ざり、洋くんの遠慮がちな声が私を呼ぶ。



「なぁに?」



何かを言いたそうな目で、じいっと私を見ている洋くんを、私もじいっと見返す。



「さっきからずっと、あかりの好きな人が誰だか気になって仕方がねぇんだけど」

「え……。そんなに気になる?」

「……なる」



夕日に照らされた洋くんの顔が赤く見えるのは、オレンジ色の光のせいなのかな?



あぁ……もう、せっかく上手いこと誤魔化せたなって思ったのに…。

でもまぁ、好きな人がいることを知ってしまったら、それが誰なのかって気になるのは当然のことだもんね。



言うしかないの……?

私の好きな人は、洋くんだよって。



いやいやっ…それはムリ!

だって洋くんは私のことを友達としか見てないんだから、フラレるってわかってて告白なんかできないよっ。