この手だけは、ぜったい離さない




店員さんからイチゴとチョコのダブルのアイスを受け取ると、そのまま店内の席で食べることにした。



「チョコもイチゴも甘くて美味しいぃ〜」

「そかそか、よかったな」



向かいに座る洋くんは、頬杖をつきながらニコニコ笑っている。



「って、洋くん自分のアイス頼まなかったの?」



さっきからじーっと私を眺めているだけで、思えばなんにも食べてない。



「うん。俺、甘いもの苦手だからな」

「……あっ、そっか。そういえばそうだったね」



確か10歳のときのバレンタインの日に、洋くんのお母さんから『実は洋は、甘いものが好きじゃないの』って教えてもらったこと。

私としたことが、ついウッカリ忘れていただなんて……。



「ごめんね。私がアイスがいいなんて言ったばかりに…。ふたりともが食べれるような物を、ちゃんと考えればよかったな…」

「俺のことはどうでもいいよ。俺はあかりが喜んでくれたら、それだけで十分だから」



洋くんが何気なく放った言葉に、トクンと胸が揺れる。



「あっ……ありがとう」



一瞬にして、ボッと焼けるように熱くなった顔を隠すようにして下を向いた。