この手だけは、ぜったい離さない




王道のバニラもぜったい美味しいし、期間限定の桜ミルク味っていうのも気になるなぁ。

あぁ、でもやっぱり大好きなイチゴも捨てがたいし、今はとにかく甘いものが食べたいからチョコもいいなぁ。



「うぅーん……どれにしようかなぁ」

「なに?そんなに食べたい味があるのか?」



私の隣に立って、同じようにショーケースを覗きこむ洋くん。



「最終選考で、イチゴとチョコで悩んでるんだけどね…。洋くんはどっちがいいと思う?」

「ん?どっちも食べればいいじゃん?」



ショーケースの中のアイスを見ながらさらりと答えた洋くんは「すみませーん、イチゴとチョコのダブルをください」って勝手に注文をしはじめた。



「どっちもって……いいの?なんか悪いなぁ」

「いーよいーよ、せっかく来たんだから好きなもん食べればいいんじゃね?」



レジの前に立って、財布からとりだした1000円札をカルトンに置いた洋くんは「だってそのぶんお礼してくれるんだろ?」と笑顔を向けてきた。



「ふふっ。お礼ってお弁当のことを言ってるんでしょ?」

「まぁ……そうとも言うな」



ほんっとに素直じゃないなぁ、洋くんは。



「わかったよ、がんばって美味しいお弁当作るね」



まぁそんなところも含めて、好きになってしまったんだけどね。