この手だけは、ぜったい離さない




はるちゃんと洋くんが楽しそうに話しているうちに、私はひとり静かに教室をでた。



「あっ、宇月さん。今から帰るところ?」



靴箱でローファーに履きかえていると、追野くんが右手をひらひらと振りながら近寄ってきた。



「うん。今日は早く帰って録画しておいた恋愛ドラマを見ようかなって」

「あっ、それって月曜日の9時からのやつでしょ?幼なじみの女の子と男の子の恋愛ドラマ。僕も毎週見てるんだよね」



そうそう。

女の子が、幼なじみの男の子のことが好きなんだけど。

これまでの仲良しな関係が崩れてしまうのが怖くて、なかなか告白ができないっていうじれったい恋愛もの。



「そうなんだっ?追野くんは、今後の展開はどうなっていくと思う?」

「そりゃあやっぱり、最後には女の子が告白して成功するんじゃない?実は俺も好きだった、とかって幼なじみのハルキが言ってさぁ」



私は「やっぱりそうなりそうだよね」なんて笑いながら、追野くんの隣を歩きはじめる。



「あかりちゃーんっ!」



そのあとも追野くんとドラマの感想を言い合いながら歩いていると、校門をくぐり抜けたところではるちゃんが追いかけてきた。