この手だけは、ぜったい離さない




私はてっきり『洋に近づかないで』って睨まれるとばかり思っていた。



「えっと……じゃあ、はるちゃんって呼んでも…?」

「うん、ぜんぜんいいよー。じゃあ私もあかりちゃんって呼ばせてよ」

「そっ……それはもちろんっ!ぜひっ…」

「ね、一緒にグラウンド行こっ?」



そうやって笑いかけてくれた南海さん……じゃないや、はるちゃん。

はるちゃんは、私を恋の敵だと思っていない…?



私に話しかけてきたのは、ただ単純に私と話してみたかっただけ?



はるちゃんについて更衣室をでると、グラウンドにはすでにほとんどのクラスメイトが集まっていた。

その中にはもちろん、洋くんの姿もある。



荒井くんと会話をしていた洋くんは、私の存在に気付いたみたいで離れた場所から手を振ってくれた。

思わず手を振り返してしまう私。



「いいなぁ……私もああやって洋に手を振ってもらいたーい…」



あっ…。

しまった……私ったら、はるちゃんが隣にいるのについつい笑顔で手なんか振っちゃって…。

はるちゃんが洋くんのことを好きって知っているのに…。



「えっと……まぁ、私と洋くんは幼なじみだからねっ?ほんとに仲がいい友達だから…」