キューは手にしてみると身長とほぼ同じくらいの長さがあった。

もっと短いと思ったのに……。

王子たちが手にしていると、キューは顎下くらいでそんなに長く感じられない。
まあ、身長差を考えなかった私がバカなんだけどさ。

それに、結構ずっしり重い。
これで白い球を撞いて、ズガーンと……ねえ。

私にも、できるんだろうか。

よみがえるのは、さっきのブレイクの一瞬だ。
よくわかんないけど、なんだかドキドキする。


「見るのが初めてってことは、やったことももちろんないよね? えっと、名前は?」

店員さんに私が名前を答えようとした瞬間、背後から王子がずいと現れる。

「隼人くん、ゲーム終わったんだ?」
「まあね。瞬殺」

さらりと答えた王子の向こうに、悔しさをにじませたインテリメガネが憤ってる。
今の言い草からして、相当うまいのだろう。
店員さんとも顔見知りみたいだし、常連ってやつか。

「ゲームもひと段落したみたいだし、せっかくなら教えてあげてよ。クラスメイトなんでしょ?」
「…………」

長身の王子から見下ろされる冷たい瞳。
そして、店員さんに促されるままに一歩前に出た王子が放った言葉は……

「さっさと帰れよ」

それだけだった。