いた! 王子隼人!!

ガラス扉の向こうには、目的とするあの男がいた。
すでにブレザーの上着を脱いで、袖までまくってる。

てか、笑顔じゃん!!
ウソ! あの男、笑えんの!?


クラスでは一度たりとも見たことのない満面の笑みに、思わず顔をガラスにこすりつける。

「これ、アキちゃんが見たら発狂するわ」

私の友達のアキちゃんは極度の面食いで、かっこいい男以外視界に入れたくないといつも無茶を言ってる。
そんなアキちゃんでさえ、たぶん、唸る。

王子の笑顔も十分に物珍しいけど、さらに問題なのは王子の周りを囲む輩だ。
超有名進学校の学ランを着た男と、お坊ちゃま私立の男。
それから私服の男は、さらりとシャツとジーパンを着こなしているだけ。

だけど、かっこいい。

文句なくかっこいい。

全員年齢は同じくらいだと思うけど、とにかく長身。
王子だって180近くて、クラスでは断トツ背が高いほう。
そんな王子がその集団では埋もれている。

うわー。
うわー。

さらに近づいて見てみたいと目を凝らした瞬間、店の扉がカランコロンと開いた。
前のめりになった体を、ふわりと誰かが支えてくれる。

「せっかくなら、中に入ってみていきませんか?」

シャツにベストに黒縁眼鏡。
見上げると、いかにもビリヤードをやっていそうな男が、私を抱えていた。