学校から三駅。
ここら辺に住んでる連中は、私も含めてほとんどが自転車通学だ。
だから、駅なんて利用しない。
そこそもここは私の中学の学区内だから、王子が住んでるわけもない。

「うわ、細い路地入った!」

電柱の陰に隠れて、慌てて後をつける。
正直、こんなことする必要はないんだけど。

でも、気になる。王子の生態!

運動神経抜群のくせに運動部には入っていない。
かといって、塾に通いまくってるという感じでもない。まあ、成績はかなりいいらしいけど。
うちの高校は原則バイト禁止だし、バンドみたいな課外活動やってるんなら、とっくに噂になってるはず。

放課後何やってるのか話しかけてもことごとくスルー。
すでに何人かの女子が告白したという噂もあるが、すべてが忙しいから付き合う気はないの一点張り。

つまり、謎しかないわけだ。

その王子がこんな駅で降りるということは、もしや彼女!? 

これはスクープなんじゃね?

王子に興味はないが、スクープには興味がある。
明日のお昼時間はこれで盛り上がれるな。
なんてほくそ笑みながら後をつけていると、二つ目の角を曲がったところで王子はビルの地下へと続く階段を降りる。

「え、ウソ! どこ行く気!?」

慌てて自転車を停めて、私もその地下を覗いたけれど、すでに王子の姿はない。


「ビリヤード……マーキュリー?」


頭上には、そんな看板が一つ掲げられていた。