「これは重傷だな。周りの奴らも毒されているのかね?」
「くそっ…こいつ…!!」
「陽君!!」
俺の拳を千紘が必死で押さえる。
「陽君はすごく優しいんです。周りから見たら『怖い』って思うかもしれないけど、私のために重い責任を背負って、思っている以上に思いやる人でした。『一安心』とかそういう言い方ないと思います。私は…陽君がやめるくらいなら私もやめます…。陽君がいなくなったらこの世に太陽がなくなったくらいにもう1度くらい生活を送ると思います。陽君は私に一筋の光をさしてくれた人だから…、次は私が力になりたいって思ってるから…」
千紘の大きな瞳にたまっていた涙がついに頬を伝っていった。
俺の心にあった怒りが消え、優しい気持ちになっていたのに気づいた。
俺が千紘にとってそんな存在だったなんて。
でも千紘が思ってるほど、俺はそんなにい人間じゃない。
いい人間になれたらな、なんて。
