「柘季ちゃんの絵を見て、僕は光るものを感じたんだ。いつか一緒に仕事ができるのを楽しみにしているよ」

「せんせー、ほんと? じゃあわたし、もっとがんばるね!」



 彼の仕事場は、幼かった私には、夢の城に思えた。家はお金持ちだったけど、プロの画家でもない子供には、神聖な場所は与えられなかった。先生の自宅には、私の持っていないものが全てが詰まっているように見えたのだ。

 室内で圧倒的な存在感を主張する大きなキャンバスに、床に散らばる宝石のような絵の具。誰にも邪魔されない自分だけの空間。私もこんな素敵な場所で絵が描けたらと、そう願って生きてきた。

 中学までは学校の美術室をアトリエ代わりに使わせてもらっていたけど、高校では一人に一つ、小さな仕事場(プライベートルーム)が与えられた。だから、私にとっては、毎日が至福のひとときだった。来る日も来る日も、食事も睡眠時間も削って、ひたすら絵を描き続けた。そんな生活を続けていたから、今ではこんな所に閉じ込められてしまっているのかもしれない。