キスは嫌いじゃない。
竹下の伏せた目が好きだから。
キスをしている間にそっと。目を開け
竹下の伏せた目を見つめている。
唇が重なって うっすら目を開く竹下と
目が合い お互い目元で笑みを交わす。
こんな近くで見ると嫌ってほど実感する。
こいつの整った表情。
この顔で女を落として 何度もこうやって夜を共に過ごしたのだろうか。
都合のいい女が1人消えるだけ。
竹下はそう思うに違いないと 私はそう思っていた。
でも 都合のいい女。その響きは自分の心を酷く傷つけた。
今まで人生を踏み外したことも
誤まった事をした事は一度もなかった。
ただこの男は黙ってくれるだろう。って妙に安心していたのだ。
私のやっている事は最低だ。

