─────俺は、水野に尊敬される自分でいたい。
思い描いた自分に近づけるように、前を向いて、やりたいことに正直に、何かに惑わされたりしない自分。
俺を目指してくれている水野が迷わないように。
「では、よろしくお願いします。唐沢本部長」
「・・・意外だったなあ、桐谷くん」
俺から異動願を受け取った本部長は、嬉しそうに首を傾げていた。
「何がですか?」
「ほら、水野さんを自分の部門に入れたから、てっきりしばらくは育成係に専念したいって言い出すと思ってたのに。やっぱり異動したい気持ちは変わらないんだ?」
「・・・はい。でも、本部長。俺が異動するまでに、水野を一人前にしてみせます。自分で商品企画ができるくらいまで」
「そりゃすごいな、商品企画部に来た頃の桐谷くんに追いついちゃうじゃない」
「ええ。ですから、追いつかれないように、俺は前に進むんですよ」
水野が好きだ。
だから今はまだ、このままで。
END



