水野には届いてる。
俺が水野に対してどれだけ真剣に向き合って指導しているか、どれだけ気にかけているか。
後輩としての水野に、どれだけ期待しているか。
全部伝わってる。
俺がずっと欲しかった『手応え』だった。
「水野ー?お前リスト忘れてったろ?何してんだ?」
「先輩!?」
三人組はばつが悪そうに、聞こえていたんじゃないかと青い顔を見合わせ始め、水野も水野で、俺に聞かれていたんじゃないかと顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。
とりあえず三人組を無視して水野にリストを渡した。
水野は少し涙目だった。
そりゃそうだ。囲まれてもあんな風に言い返すなんて、怖かっただろう。
──俺のために?
「先輩・・あの・・」
「ありがとな、水野」
水野は本当に、『先輩』としての俺を尊敬してくれている。俺にとってこんなに大事な『後輩』を、簡単に手放していいわけない。こんな後輩には、もう二度と出会えないかもしれない。
水野のことが大好きだ。
でも、この関係を、恋愛なんかのせいで崩したくない。
「あの、水野はただの後輩です。仕事だって誰より真面目にやってる。・・・これ以上、邪魔しないでもらえますか」
そう宣言すると、三人組は小走りでこの書庫を出ていった。
『ただの後輩』と言ったことに自分でも物悲しさを感じているが、水野とは、先輩・後輩としての関係を築いていきたい。



