終業後。
駅前、居酒屋。


「で、どうなの桐谷。新人のかわいこちゃんとは仲良くやってる?」

「・・・オイ、かわいこちゃんって、お前なぁ」


同期でインテリア部門にいる高橋と久しぶりに飲みに来ていたが、噂話の好きなコイツはやたらこういう話題に持っていきたがる。

ビールをあおっていた俺はそれを置いてため息をついた。


「水野はただの後輩だ。変な言い方すんなよ」

「だって結構可愛い感じだよな水野さん。純粋っていうかさ。実家の犬みたいだわ」


(それはわかる・・・!)


「オイ、犬とか言うな。・・・でもまあ、素直だな。覚えもいいし。なかなかできる後輩だよ」

「へー、良かったじゃん。でもインテリアとかコスメの女の子たちはすげー怒ってるよ。お前が教育係なのが羨ましいみたいでさ」

「・・・は?怒ってる?」

「みんな徒党を組んでご立腹だぜ。『新人の女、桐谷さんに媚びてて調子乗ってる』って。」


高橋は誰かの真似をしながらお姉仕草でそう言った。

それが結構憎たらしくて、俺は本気でイラッときた。

なんで女ってすぐにそうなるんだ。


「別に水野は媚びてねえよ。なんでそうなるわけ?」

「さあなぁ。女ってコエーからな。そこら辺もちゃんと見といてあげないと苛められちゃうかもよ。ま、あと必要以上に仲良くしない、とかな」

「・・・分かった」


もともと水野と必要以上に仲良くする気はない。
彼女とは仕事上の付き合いをしてみたいと思っただけで、プライベートで関わるわけじゃない。

・・・でも。

そんな面倒なことで苛められたりして自信を喪失するようなことは絶対にさせない。
あんなに前向きに頑張ってるのに、可哀想だ。

俺が守ってやらなきゃ。