ー中学1年生、夏ー


「…んだですか!やめてくださ…!!」


掃除の時間だった。

体育館掃除だった私と綺乃の耳に、嫌がる声と、

「…早くしろよ、トロいんだよ!」

という苛立ちを抑えきれない声が聞こえた。

体育館裏の倉庫に無理やり入らされる生徒。

制服のリボンがグリーンだから1年生だ。

短くカットされたスカートから見て追いりのおどろきに込んでいる方が3年生だろう。

「大丈夫かなぁ…」

心配しながらも他人行儀な私に、

「本当に思ってないことは口に出さない方がいいよ。」

と言った綺乃。

「えっ…。」

図星。

「うふふ、心配しなくても助けに行くから大丈夫だよ、紅月!」

綺乃はそう言ってホウキを手に持ち、ぴしゃりと閉ざされた倉庫のドアをスライドさせた。


ーガラガラガラ…

「先輩、何してるんですか?」


「…別に。今可愛い後輩と親睦深めてるから邪魔しないでもらえるかな?」

「親睦って!ククッ」

先輩の友達が親睦という言葉に笑い始める。

「そうは見えませんよ?さっきからこの子嫌がってるじゃないですか。」

綺乃も負けずに微笑む。

「いいから黙ってお掃除でもしてろよ。」

先輩は急に綺乃のことをぎろりと睨む。