「綺乃様。おかえりなさいませ。」


スタジオを出ると使用人の七瀬菜摘(nanase natumi)が飲み物を持って頭を下げた。


「早く頂戴。」


「すいません、どうぞ。」


七瀬は笑わない。今も頭を下げながらもポーカーフェイスを保ったままだ。

おそらく40代だろう。私が雇っているわけではないからよくわからないが、分かることは一つある。

私の家はお金持ちだ。


パパと母は私が幼いころに離婚している。


経済力のあるパパに引き取られた私。そもそも母親の顔すら覚えていない。


パパは政治家で私はモデル。使用人も何人かいて大きい屋敷に住んでいる。