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蒼太 side

体力作りを続けてようやく九月二十日がやって来た。
今日は、秋晴れに恵まれ気持ちがいい。
デジタルカメラ良し、千秋のお母さんの手作りイチゴサンドイッチ良し、あと薬も良し、ということで、いざ出発!
「千秋……。行ってくる……」
病院を出て、タクシーで光山の麓へ。





「ここが光山かあ。思ってたより低いな。トレーニング、やりすぎたかな。まあでも、やりすぎぐらいでちょうどいいかも」
俺はすれ違う人と挨拶しながら、デジタルカメラで写真を撮りながら、頂上を目指した。
そして、三十分ほどで頂上に着いた。
「頂上、着いたー! 空気が美味い! 最高!」
お昼までまだ時間があるので、写真を撮ることにした。
赤や黄色に色付き始めた木々を写真におさめていく。
写真をたくさん撮っているとお昼になった。
「お昼! お昼!」
千秋のお母さんが作ったイチゴサンドイッチをパクリ。
「美味い! さすがは、千秋のお母さん!」
俺はイチゴサンドイッチをあっという間に平らげた。
「千秋も来れれば良かったのに……」
さびしさを埋めるように写真を撮りまくる俺。
「さて、下山しますか」
三十分ほどで下山した。
そして、撮った写真を千秋に自慢しようとウキウキしながらタクシーに乗り込む。





病院。
「千秋、驚くだろうなあ。たっぷり自慢してやろう」
いつもの部屋に千秋がいないので、看護士に訊いて前まで使っていた千秋の部屋へ。
「千秋、ただい……ま……」
部屋に入ると千秋のお父さんとお母さんが泣いていた。
「蒼太君、ついさっき、千秋は天国にいった……」
俺は勢い良くベッドに横になっている千秋に飛びついた。
「千秋……。千秋!」
涙が溢れ出す。
「光山、登ってきたぞ……。約束……約束代わりに果たしたからな……。写真撮ってきたんだ。どうだ、すごいだろ? 目を……目を開けてくれ!」
「蒼太君……」
「千秋……。千秋!」
「蒼太君、落ち着いて」
「約束は守った。だから、ゆっくり……休めよ……」
千秋が笑った気がした。
俺はそのなきがらに涙を流しながら笑顔を返した。





後日。
千秋の葬儀は家族だけで行われた。
俺は友達を、いや、好きな人をなくした痛みに苦しんだ。
その苦しみはしばらく続いた。


End