39


三年二組の教室。放課後。
午前中まで晴れていた空は、雨雲を呈し、雨がポツリポツリと降ってきた。
夏美は素直に待っている。翔太はサッカー部の用事で今はいない。
俺以外にも観客がいるようだ。三年二組の女子のヒエラルキーの中でトップに属する卜部由美子(うらべゆみこ)とその仲間とその他数人。
「なぜ、由美子がいるんだろうか」
疑問が浮かび、あれこれ考えていると翔太がやって来た。
「おっそーい。さ、夏美が待ってるよ」
さすがは由美子女王、声が良く通る。というか、声がでかい。
翔太が教室に入る。
二人がなにやらモジモジし始める。
そしてついに、翔太が告白したようだ。ここからは良く聞こえないが、夏美の笑顔がその証拠だろう。
しかし、翔太がまた何か言ったようだった。雨の音であまり良く聞こえないが確かに、罰ゲームなんだ、と。
次の瞬間、夏美の笑顔から涙がポロポロと流れ落ちた。
そして、夏美は教室から逃げ出した。
夏美と入れ替わるように俺は翔太のもとへ。
バシッ。
俺は、無意識に翔太を殴った。
「いてえ」
「悲しませるんじゃねーよ……。夏美を悲しませるんじゃねーよ!」
「……」
「夏美がお前のことどれだけ好きか分からないだろ!」
もう一度殴った。そしてもう一度、もう一度。
翔太は罪悪感からか抵抗してこない。
何度殴っただろうか。翔太のイケメンが台無しだ。
やれることはやった。
俺は、夏美を探しに向かった。