「…………外出か…」

「…やっぱり、難しいですか?」

「うん。……咲楽ちゃんの場合、点滴で薬を入れていないと痛みが激しいこともあるし、なにより…外出先で万が一のことがあったら大変だから。」

……案の定、先生は外出には賛成してくれない。

やっぱり無理か……最後でいいから出かけたかったんだけど…

そう思っていた直後、奏汰くんが口を開く。

「どうしてもダメですか?せめて1回……1回でいいから外出できませんか?咲楽ちゃん、ずっと行きたいって。最期に1回でもいいから行きたいって……!!ダメですか?」

「………………」

重い沈黙

ダメかな。…先生も、ここまで言われたら断り辛いか……

でも、行けなくても奏汰くんがここまで必死に言ってくれたことが嬉しかった。



私は、奏汰くんの手を少し握って、それから奏汰くんがいるであろう方向を見た。

アイコンタクトは出来なかったかもしれなかったけど、せめて奏汰くんにありがとうの気持ちをそっと伝えた。