暖かい…
誰かに手を握られている。
僕は重い瞼をゆっくり持ち上げた。
「…なた?奏汰?気が付いた?」
お母さん……
何だか頭がボーッとする。
体も重い。
あれ、僕、何してたんだっけ……
そこまで考えたところで、自分の口に酸素マスクが着いていることに気がつく。
あ、そっか……手術…………終わったのか…
手術…………違う、何か大事なこと…
あぁ……頭がボーッとする。
「奏汰……」
涙目のお母さん。
違う、ほんとなら僕が握ってる側のはず…
"奏汰くん"
弱々しい声……
僕が守ってあげたい…
そう、咲楽ちゃん……
「……ぉかあさ………………さく…ら……ちゃん…………は?」
「さくら…ちゃん?前に隣のベッドにいた子?」
そう、その子。
そう言いそうになって、僕は違和感を覚える。
"前に"……?
とてつもなく、嫌な予感がする。
胸が、ザワザワして、気持ちが悪い。
「……さ…………くらちゃ…」
「その、お隣の子も、もう元気になったのかしらね」
そう言ってお母さんはベッドの周りのカーテンを開ける。
そこに咲楽ちゃんの姿は、なかった。



