歳三は再び咳払いをして、周りを見渡した。
子供達は固唾を飲みながら、歳三の報酬とやらの報せを待つ。

「それでは報酬を知らせるぞ。
四番隊には味噌汁を与える。
五番隊には味噌汁と漬物。
二番隊は味噌汁、漬物、煮物。
一番隊は味噌汁、漬物、煮物と魚。
そして三番隊には、それらと玉子料理を愉しんで頂きたい!」

玉子料理と聞いて子供達はどよめいた。
一つ二十文もする高級料理である玉子が出るというのだ。
 分かりやすくいえば、当時の蕎麦の平均的な値は十六文で玉子は二十文である。


「やっぱり“お大尽”の食卓っていうのは違えよな」


そんな声も上がる中、続々と料理が膳に乗せられやってきた。
歳三が隊で分けたのは、料理の事も考えていたからである。

 献立は前日から為次郎に頼み込んで女中に用意させてもらっていたのである。

配膳される数も決まり、高級食材である玉子も不平不満なく最低限に済ます事が出来るのだ。

「玉子ふわふわです」

 注目の玉子料理は、“玉子ふわふわ”という熱した出汁に、よく泡立てた卵を一気に流し入れ、蓋をして蒸らす。
出来上がったものをダシ汁とともに器によそい、飾り付けとして胡椒や青のりを振ったものであった。