行きたい!
ものすごく行きたい!
行きたすぎる。
だけどそう思えば思うほど、この質問には拒否という選択肢しかない・・。
夏目とまともに喋るのは一緒に弁当食べたとき以来だな。
ハルイチに電話した時はケンカっぽく終わっちゃったままだし。
・・というか、前までと違ってこんな冷めた感じで喋ってくるのも、
ひょっとして夏目にとって、俺が“ケンカ中の相手”だからなのか・・。
・・まずいな・・
なんかずっと不機嫌だし・・でも断るしか・・。
「・・他の子誘えよ。なんで俺なんだよ。
それに・・」
!!!!!?
「うわっ!な、なにするんだよ!!」
夏目がいきなり俺の腕に抱きついてきた。
「一緒に来てくれないと、“河原君に胸を触られた”って明日みんなに言いふらすから。」
夏目は更に強く俺の腕を抱きしめる。
「冗談やめろよお前!」
「だって事実でしょ。」
「お前が勝手に押しつけてきてるだけじゃないかよ!
あと、意外と力強いんだな。」
「・・・それ今どうでもよくない?」
「どうでもよくない・・事は無いけどさ・・」
ダメだ。全然抜けない。
俺の右腕は完全に夏目の体にロックされてしまった。
まずい・・どうする・・。
「監督、チケットくれるのは嬉しいんだけど、さっきいきなり渡すから。
今から誘っても一緒に行ける子なんていないよ。
1人で観てもつまらないし、一緒に来てよ。」
・・・・このままでは埒があかない。
ここは一旦油断させよう・・・・
「・・・・」
無言のまま、玄関の鍵を閉める。
「今から向かえば、キックオフまでには間に合うな。」
「ありがと。」
夏目と俺はお互い自転車に乗り、駅へと向かう。



